腎臓移植

腎臓移植

腎臓は左右に2つあり,腹腔内で背中側の横隔膜寄りにある握りこぶし大の臓器で,体内からの水分排泄、尿毒素の排泄、造血因子の分泌、血圧調節、骨代謝など、重要な機能を備えています。正常な腎臓であれば,1個で成人の健康を十分維持する能力があることから,生体腎臓移植では患者(レシピエント)は健康者(血縁者、家族)の2つある腎臓の1つをもらい,移植する事になります。亡くなった人からの提供による死体腎移植では,2つの献腎を1つずつ2人のレシピエントに移植することができます。移植のための一般的な医学的条件として,提供者(ドナー)、レシピエントともに活動性の感染症や悪性腫瘍がない事が絶対的に必要であり,また移植する臓器に高度な機能障害があってはならない上で,免疫学的条件として血液型の不適合がない事、組織適合抗原系(HLA)の不適合数が少ない事、またリンパ球交差試験が陰性である事が重要であります。HLAとしてはA、B、DR型が調べられ,それぞれに2種類ずつ計6種類あり,血液型と同様にHLAは両親からその型を半分づつ受け継ぐことから,親から子供への生体臓器移植であればHLAの半分は一致し,兄弟姉妹であれば全部合うもの、半分一致したもの、全く合わないものといった3通りの組み合わせとなります。非血縁者間で行われる死体腎移植では,ドナーのHLA型と不一致のないレシピエントが優先されるが,その次にはDRが適合していてA、Bの不一致数の少ないレシピエントが選ばれます。最終的には,ドナーのリンパ球とレシピエントの血清を試験管の中で合わせて,レシピエント血清の中にドナーリンパ球を障害する抗体が存在しない事を確かめたうえで移植が行われます。
   腎臓移植は慢性腎不全の根本的な治療法で,腎不全によって透析療法を受けている患者で,移植希望の意思のある人が対象となります。移植が成功すれば,透析治療から離脱することができ,免疫抑制薬の服用を続けることによって拒絶反応を起こさないようにすれば,健康な人と同じ生活をいとなむことができます。腎移植には親子、兄弟姉妹などの血縁者から腎臓の提供を受ける生体腎移植と脳死か心臓死された患者から善意の腎提供を受ける死体腎移植の2つの方法があります。死体腎移植とは生前から死後の臓器提供を承諾していた腎臓病や悪性疾患以外による患者の死亡と同時に,遺族の承諾を得て,腎臓を取り出し,待っている腎臓病患者に移植するものです。移植される腎臓は骨盤部に植えられます。植えられた腎臓はその人にとって非自己なので,急性および慢性の拒絶反応が起きます。以前はそのために移植腎の機能がなくなり,せっかく植えた腎臓を摘出しなければならないこともありました。最近はシクロスポリン、タクロリムス等の優れた免疫抑制薬が使用されますので,重症の拒絶反応を起こす事が少なくなり,移植した腎臓の生着率はきわめてよくなりました。
腎臓移植の適応について
   基本的には,全ての末期腎不全の患者が腎臓移植の対象となります。年齢的には,元気であれば60歳代でも移植を受けられています。最近では70歳前半でも移植を受けた患者さんもいます。透析期間の長さは関係ありませんが,癌や肺炎などの活動性の感染症あるいは進行性の悪性腫瘍を合併している場合は,移植を延期又は中止します。病状の進行具合にもよりますが,糖尿病や膠原病の人でも移植手術は可能です。
   移植をすることによって症状が悪化するような病気は,前もって完全に治療してからではないと移植手術は受けられません。胃・十二指腸潰瘍、感染症(腎盂腎炎、肺炎、肺結核、慢性中耳炎、副鼻腔炎、虫歯など)、血清肝炎、肝障害、膀胱機能・下部尿路系の異常、精神神経障害などは早期にしっかり治すことです。
腎臓はどこに植えるのですか?手術時間はどれ位ですか? 移植は何度でも受けられますか?
   腎臓移植が肝移植あるいは心移植と大きく異なる点は,脳死下での摘出以外に心停止下で摘出した腎でも腎移植が可能な事です。さらに臓器の保存時間も肝臓、心臓と比較して長時間可能であり,摘出後最長72時間程度まで移植可能です。ただし,保存時間が短い方が移植後の腎機能は良好です。移植手術は全身麻酔で行い,摘出された腎臓は,通常移植者(レシピエント)の右下腹部の骨盤内に移植します。腎動脈は内腸骨動脈あるいは外腸骨動脈と、また腎静脈は外腸骨静脈へそれぞれ吻合し,さらに尿管は膀胱へ吻合します。 手術の切開創は約15cm〜18cmで,手術時間は癒着の度合や吻合する血管の数などによりますが,おおよそ3〜4時間です。自己腎は特に問題がなければそのままの状態で残します。
   移植された腎臓が何らかの理由で機能が失われた場合,再び透析治療を受けることになりますが,チャンスがあれば再び移植をうけることが可能です。
移植後の拒絶反応、免疫抑制及び感染症
   人間の体は,細菌、ウイルスなど,本来自分の体に属していない異物が侵入してきた時,攻撃して異物を排除しようとする一連の反応を起こしますが,これを免疫反応といい,体を病気から守るための不可欠の役割を果たしています。ところが臓器移植の場合,移植された臓器も異物とみなされるため,攻撃の対象となってしまい,拒絶反応を起こします。拒絶反応が激しければ,移植された臓器は破壊され,機能しなくなってしまいます。
   移植後は拒絶反応が起こらないように免疫抑制剤を服用します。経過とともに薬の量は減っていくが,原則として患者は臓器が生着している限り一生飲み続けていかなければなりません。免疫抑制剤は優れた効果があると同時に,様々な毒性、副作用などがある事から,通常はいくつかの薬剤を組み合わせる併用療法がおこなわれています。多くの場合,主剤としてシクロスポリンかタクロリムスのどちらかが使われ,併用薬としてステロイド剤、ミゾリビン、アザチオプリン等が用いられることが多いのです。シクロスポリンとタクロリムスは常に血中濃度を測定し,適切な濃度となるように服用量を補正していきます。
   適切に免疫抑制を行っていっても急性拒絶反応は発現し,程度の差はあるが,腎移植患者では50〜60%でみられると思われます。しかし,早期発見と早期治療により,急性拒絶反応のほとんどは治療することができます。そのためには,ステロイド、塩酸グスペリムス、抗リンパ球抗体、ムロモナブCD3といった拒絶反応治療薬が短期間使われます。

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